米国プロ野球(MLB)では「フライボール革命」と呼ばれる、ゴロよりフライを狙うという打撃戦略が流行しており、日本プロ野球(NPB)でもこの打撃戦略が広まりつつあります。 しかしながら、身体的特徴や戦略の異なるNPB試合においてもこの打撃戦略が有効かは明らかではありません。 本研究では、NPB試合ではフライよりゴロの方が良い打撃成績につながるという仮説を検証しました。 NPB試合にてレーダートラッキングシステム(TrackMan radar system, TrackMan A/S)で計測された39,469打球の打ち出しスピードと上下角、打撃結果を分析に用いました。 上下角に基づき軌道(フライ/ゴロ)を判定し、インプレー打率と長打率を軌道毎に算出・比較しました。 その結果、フライの両打撃成績がゴロのものより有意に高いことが示されました。 これより、本仮説は棄却され、NPB試合でもゴロよりフライを打つことが有効な打撃戦略であることが示されました。 NPB試合での平均的なスピード帯域120-150 km/hでは10°~20°で打ち出されたライナーの打率が高かったことから、打球スピードが平均的なNPB打者は本塁打になるような大きなフライを狙うより、ライナーを狙うべきであることが示唆されました。

この論文はオープンアクセスとなっています。 https://doi.org/10.1080/24748668.2022.2075302



外野フライは飛翔中ボールに作用する流体力の影響により「スライスする」「フックする」など様々な飛翔軌道を描くことが知られています。 飛翔軌道の多様さは外野手にとって捕球しにくさに影響を及ぼし、外野手の守備範囲を狭める一因となると考えられますが、この影響を定量的に評価した研究は見られません。 そこで、本研究では、①外野フライの変化量を定量的に評価し、引っ張り・流し方向間で比較し、また②引っ張り方向への外野フライの方が捕球しにくいという仮説を検証しました。 日本プロ野球試合にてレーダートラッキングシステム(TrackMan radar system, TrackMan A/S)で計測・収集された外野フライ25,413球の飛翔時間と落下位置データから変化量を算出し、飛翔方向間(引っ張り・流し方向)で比較しました。 守備機会は外野手のポジションによって異なることから、数学的補正を行った上で外野手の守備範囲を定量化するために、機械学習を用いた手法を提案しました。 フライの特徴から打撃結果を予測する機械学習モデルを構築し、生成したフライデータのアウト率、及び守備範囲(アウト率>60%)の面積を算出し、ポジション間で比較しました。 その結果、流し方向ではフライの99%がスライスしていましたが、引っ張り方向への打球は両方向へ変化し、かつ大きなばらつきがみられました。また、引っ張り方向でのアウトゾーンが最も狭く、アウト率が低いことが明らかになりました。 引っ張り方向での打球軌道の多様さが落下位置の予測を困難にさせ、アウトゾーンを狭めたと考えられます。

この論文はオープンアクセスとなっています。 https://doi.org/10.1007/s12283-022-00373-6



本研究の目的打者が投球を逆方向に打ち返すことができるインパクト状態を決定することである.野球ボールと木製バットの衝突モデルの構築には三次元の有限要素分析を利用し,一連のシミュレーションはバット角度と衝撃線角度を入力変数として行われた. ボールインパクト時のバット水平角およびバット鉛直角をそれぞれ-31~20°と0~51°の範囲内で 3°ずつ,衝撃線角度を5 ~30°の範囲内で 5° ずつ変化させた.各入力変数に対し,打球速度と打球角度が決定された.本シミュレーションモデルは大学生野球選手を対象とした屋外での実打実験データとシミュレーション結果を比較することにより妥当性を検証した..

シミュレーション結果から, 指定された流し打ち方向に最大の打球速度を獲得するには,バット水平角が意図した流し打ち角度の約 60%の角度となるようにインパクト位置を定め,そこでほぼ正面衝突もしくは,衝撃線角度 =5 ~ 10°でインパクトできるようにボールを打撃する必要がある.さらに,衝撃線鉛直角とバット鉛直角が変化すると打球水平角及び打球速度が変化すること,つまり, ある方向へ打球を打ち出す際のバット鉛直角と衝撃線角度はトレードオフの関係にあることが明らかになった.

キーワード:バイオメカニクス,最適化,3 次元解析


We investigated the rotational effect of buoyant force around the body’s transverse axis, termed buoyant torque, during a 200m front crawl maximal swim. Eleven male swimmers of national or international level participated. One stroke cycle (SC) for each 50m was recorded with two above and four below water cameras. The following variables were analysed: swimming velocity; absolute and normalised buoyant force; minimum, average and maximum buoyant torque; SC and arm recovery times. The average value of buoyant torque was higher in the first 50m (14.2 ± 4.5Nm) than in the following 150m (9.3 ± 4.1Nm~10.9 ± 4.5Nm) and was directed to raise the legs and lower the head throughout the race. The change in its magnitude seemed to be linked to the shorter time spent proportionally in arm recovery (first 50m: 27.6% of SC time; next 150m: 23.3–24.4% of SC time). Most swimmers had periods of the SC where buoyant torque was directed to sink the legs, which accounted to 10% of SC time in the first 50m and about twice this duration in the next 150m. These periods were observed exclusively at some instances when the recovering arm had entered the water while the opposite arm was still underwater.

KEYWORDS: Biomechanics, swimming, flotation, torque, three-dimensional videography


本研究では,エリート野球投手が投じる様々な球種の運動学的特徴を分析し,「いかなる球種も他の球種と同様の運動学的特徴を有さない」という仮説を検証した.

ハイスピードカメラを用いて84名の熟練した野球投手の投じたボールにおける投球直後の軌道を撮影した.各投手には試合や練習で投じるすべての球種を投じさせ,それぞれについて球種を自己申告させた.各投球に対し,球速,回転軸及び回転数という運動学的特徴を算出した.回転軸と回転数は特注の機器で算出し,球速はレーダーガンで測定した.仮説の検証には,一元配置分散分析及び事後検定としてGames-Howellの多重比較を用いた.

総計364球の投球は自己申告により11の球種に分類された.複数の投手が投じた10球種のうち,フォーシーム,スライダー,カーブ,カッターの4球種は他の球種とは異なる独特な運動学的特徴を有していた.(1)チェンジアップとシンカー,(2)フォークとスプリット,(3)ツーシームとシュートそれぞれの球種間ではいかなる運動学的特徴も有意差を示さなかった.したがって,これら3組の球種に関しては帰無仮説が採択された.つまり,よく運動学的に似た球種を投手は異なるものとして分類していた.

変化球と速球を比較すると,以下の3つの分類ができた.(1)球速,回転数が小さく,回転軸が異なる球種,(2)回転数が同程度で,球速,回転軸が異なる球種,(3)球速及び回転軸が同程度で回転数が小さい球種.これらの結果はいくつかの球種における運動学的特徴は指導書等で従来説明されてきた特徴と異なることを明らかにした.


本研究の目的は腹式呼吸をした時,胸式呼吸をした時と比べて浮心位置が重心位置に対してより尾側に位置するという仮説を検証することであった.腹式呼吸と胸式呼吸の技術を有する10名の健常男性を被験者とした.それぞれの呼吸様式の吸入時に対して,重心位置,浮心位置,2心間の距離を経時的データとして求め,呼吸様式間の変化を比較した.浮心・重心ともに吸入により移動し,その距離と方向は呼吸様式により有意に異なった(p<0.01).2心間の距離は腹式呼吸(1.11cm)において胸式呼吸(1.21cm)よりも有意に小さかった(p<0.01).いずれの呼吸様式においても,吸入量に関わらず浮心は重心よりも頭側に位置していた.これらのデータは重心位置に対する浮心位置は腹式呼吸において胸式呼吸よりもより尾側に位置しており,仮説を支持するものとなった.これらの結果は呼吸様式が重心まわりの浮心によるモーメントの大きさに影響をもたらすことを示し,泳者が水面上で水平姿勢を保つ能力に影響をもたらすということを示す.

キーワード クロール泳,腹式呼吸,モーメント


投球動作で観察される投球腕が最も後方に捻られた肢位は, 投球腕を効果的に加速するための反動運動の切り返しにあたる重要な局面です. 本研究ではこの瞬間に至る過程の肩甲骨と肩関節の動きについて調べました. 対象は熟練した技術を有するプロ野球投手20名でした. 踏込み脚が地面に接地した瞬間,肩甲骨に対して上腕骨が後方に引かれ, 肘が大きく後方に位置していましたが,投球腕が最も後方に捻られた瞬間では, 肩甲骨に対して上腕骨が整列した姿勢で,肘が肩甲骨に対して側方に位置していました. この姿勢は肩関節の「ゼロ・ポジション」と呼ばれ,可動性と安定性に優れた姿勢です. つまり,踏込み脚接地時から加速期直前にかけて,投球腕の動きに連動して肩甲骨がその向きを変化させることで, 肩関節にとって可動性と安定性に優れた理想的な姿勢で,肩関節が大きく捻られていることが分かりました.

投球動作において「両肩を結んだ線分よりも肘を高く挙上すること」は, 肩関節の「ゼロ・ポジション」を獲得するために必要であるかどうかを, プロ野球投手20名を対象に調べました.「ゼロ・ポジション」とは、 肩甲骨に対して上腕骨が整列された肢位で,肩関節の可動性と安定性にとって理想的な肢位であるとされています. 「ゼロ・ポジション」に到達した投手8名は,肩甲骨の動きが小さく,肩関節の動きが大きい特徴を有し, 肘は両肩を結んだ線分よりも高く挙上されていました. 一方,「ゼロ・ポジション」に到達しなかった6名の投手は上記8名の投手と比較して, 肘の位置が10度程度低く,肩甲骨の動きが大きく,肩関節の動きが小さい特徴を示しました. つまり,「ゼロ・ポジション」を獲得するためには, 両肩を結んだ線分よりも肘を高く挙上する必要があることに加え, 肩甲骨と肩関節の協調運動(肩甲上腕リズム)が重要な要因であることが分かりました.

投球・打撃技術において、遠位端に保持された様々な質量や形状の物体を効率よく加速するために, それぞれの技術に特徴的な肩関節の運動が観察されます. 本研究では,約300gのラケットを加速するテニスサーブと約145gの硬式野球ボールを加速する投球における肩甲骨と肩関節の協調運動の違いについて調べました. それぞれの技術に熟練した大学生のテニス選手と野球選手を対象に比較しました. 約420gのフットボールを投げる場合は投球に比べて,体幹に対して肘が前方に位置することが報告されていますが, ラケットを加速するテニスサーブでは投球に比べて,体幹に対する肘の位置は投球と同程度ですが,肩甲骨に対して肘が前方に位置していました. つまり,体幹からみた投球・打撃腕の動きはテニスサーブと投球で類似していますが,肩甲骨と肩関節の協調運動が異なることが分かりました. この変化は加速する物体の質量に適応した,肩関節と肩甲骨の協調運動(肩甲上腕リズム)の変化ではないかと考えられます.

よく野球のコーチや解説者は「このストレートはノビがある」とか, 「今日はキレがありませんね」等といった感覚的な言葉で投球を評価します. しかしそれが何を指しているのか,どうすれば改善できるのかはよく分かっていませんでした. 本研究は投手の指先から放たれたボールの回転に着目することで感覚的なパフォーマンス指標の正体に迫り,改善法を探るものです. これまでにプロ野球等のたくさんの一流投手の"ストレート"を高速度ビデオカメラで撮影し, 詳細に分析してきましたが,ほぼ全ての投手の"ストレート"はいわゆる純粋なバックスピンではありませんでした(図). その中でも,"ノビ"があるとされ空振りを多く奪う投手のストレートは,純粋なバックスピンに非常に近く,また回転速度が速いものでした. このように他の球種についてもその回転には個人差があると考えられ,現在分析を進めています.

本研究では,飛距離の長い打球や勢いのある打球を放つにはどのようなスイングが適しているのかを調べました. 大学野球選手13名にマシンによる投球に対し,センター返しを行わせました. 打球飛距離60m以上,かつ自己評価の高かった打撃について,インパクト前後のボールとバットの運動を記録しました. その結果,飛距離が長く勢いのある打球ほど,並進速度が大きく回転速度の小さな打球であることがわかりました. また,低い弾道ほど打球に勢いがありました.このような打球を放つためには,ヘッドスピードを高め,アッパースイングによるインパクトを行うことが重要であるとわかりました. さらに,勢いのある打球を放つためには,バットの長軸回りの回転(ローリング)速度を高めることが重要であるとわかりました.

本研究では,勢いのある打球を放つためには,スイングの速度を高めることと,インパクトの正確さを高めることのどちらがどれだけ重要であるのかを調べました. 大学野球選手10名にマシンによる投球に対し,センター返しを50球打たせました. センター方向に放たれた全ての打撃を分析対象とし,インパクト前後のボールとバットの運動を記録しました. その結果,打球の勢いの変動を説明する因子は選手により異なりましたが,インパクトの正確さが48~76%と高い確率で貢献していました. すなわち,勢いのある打球を放つためには,バットの芯付近でボールの中心をインパクトするようにスイングすることが最も重要であるとわかりました. また,全ての打者でスイングスピードを抑えることでインパクトの正確さを高めるような,スピードと正確さのトレードオフはみられませんでした.

本研究では,流し打ちを成功させるにはどのようなインパクトが必要であるのかを調べました. 大学野球選手16名に,マシンによる投球に対して流し打ちを行わせました. 打球飛距離40m以上の流し打ちを分析対象とし,インパクト前後のボールとバットの運動を記録しました. その結果,打球の左右方向はインパクト時における水平面上のバットの向きだけでは決まらず, バットの打撃面を引っ張り方向へ向けた流し打ちもみられました. そこで,インパクトの詳細を3次元的に分析したところ,流し打ちにおける打球の左右方向は, バットの打撃面を流し打ち方向に向けたインパクトだけでなく,バットヘッドをグリップよりも低くすることと, ボールの下側を打撃することの相互作用の影響も受けることがわかりました.

本研究では,バットの打撃面を流し打ち方向へ向けたインパクト(第1メカニズム)と, バットヘッドの下向き傾斜とボールの下側を打撃することの相互作用(第2メカニズム)のどちらが流し打ちにとって重要なのかを調べました. 大学野球選手16名に,マシンによる投球に対して流し打ちを行わせました. 打球飛距離40m以上の流し打ちを分析対象とし,インパクト前後のボールとバットの運動から, 第1・第2の両メカニズムが打球の左右方向にどれだけ貢献していたのかを算出しました. その結果,バットの打撃面を10°以上流し打ち方向へ向けたインパクトでは第1メカニズムが大きく貢献し, バットの打撃面をセンターから引っ張り方向へ向けたインパクトでは第2メカニズムが大きく貢献していました. そして,全体の約7割が,第2メカニズムが優位となる流し打ちでした.

本研究では,女子ソフトボール選手が左右(引っ張り・流し打ち)・上下(ゴロ・ライナーまたはフライ)への打ち分けを,どのようなインパクトで行っていたのかを調べました. 大学女子ソフトボール選手19名に4方向への打ち分けを行わせ,各方向につき自己評価の高かった1試技を記録しました. その結果,上下方向の打ち分けは,アッパー・ダウンといったスイングの軌道よりも,そのほとんどをバットの短軸方向のインパクト位置の調節により行っていました. また,左右方向への打ち分けは,大部分を水平面におけるバットの向きで調節していたものの, ゴロと同じ方向にフライを放つためにはバットの向きをフライの時よりも5~10°流し打ち方向へ向けてインパクトさせることにより行っていました.

本研究では,引っ張り・センター返し・流し打ちの3方向に打球を打ち分ける際に, どれだけ許容範囲があるのかを,インパクト時のバットの向きに着目して調べました. 大学・社会人・プロの計47名にマシン投球に対してフリー打撃を行わせました. 全761試技のインパクト時のバットの向きによって構成される打ち分け可能なインパクトエリアを,打球方向毎に算出しました. その結果,インパクトエリアには打球方向間で重複がみられ,バットの向きが同じインパクトであっても, ゴロやフライによって打球が3方向全てに放たれるエリアが存在していました. また,引っ張りや流し打ちを確実に打ち分けるには,バットの打撃面を±10°以上レフト側やライト側に向けてインパクトさせる必要があることがわかりました.

バッティング動作において,①体幹と上肢の各関節運動がバット速度の増加にどれだけ貢献しているのか, また②バット速度の大きい選手の関節運動の特徴を明らかにしました. 大学野球選手17名に実戦を意識したティーバッティングを行ってもらい,その動作を分析しました. その結果,スイング局面の前半では体幹の回転運動, 後半では手関節の回転運動がバットを加速させるために貢献していましたが, 肩関節の関節運動はほとんど貢献していないことが分かりました. また,バット速度の大きかった選手は,踏み出した足が完全に接地するまでは肩関節の回転速度を小さく(肩の開きを抑える)し, スイング局面前半では骨盤の回転に遅れないように胸郭を投手方向へ回転させるようにして(体幹を一つの塊のようにして)スイング動作を行っていました.

水泳競技において,遊泳中の水の抵抗を軽減することは非常に重要な課題です. 水泳選手は体が水平方向を向いた姿勢(水平姿勢)で水に浮かびながら泳ぐことにより, 水の流れに直面する体の面積が少なくし,抵抗を減らすことができます. しかしながら,人が水平姿勢で水に浮いた場合,人の体は一般的に足が沈む傾向を持っています. また,この足が沈む傾向が大きな人は,足が沈む傾向が小さい人よりも水の抵抗が大きくなることが知られています. この研究では,腹式呼吸法によって空気をより下半身に近づけることで, 足が沈む傾向を小さくできるのではないかと考え,その仮説を検証しました. 水中に高精度の天秤計りを設置し,その天秤ばかりの上で空気をお腹に入れる腹式呼吸と空気を胸に入れる胸式呼吸を行わせ, 足の沈む傾向が変化するかを調べました.その結果,腹式呼吸で息を吸うことで胸式呼吸よりも足が沈む傾向が小さくなることが分かりました. また,その効果によって泳動作に必要な消費エネルギーを約5%節約できそうであることが示唆されました.

水泳競技において,遊泳中の水の抵抗を軽減することは非常に重要な課題です. 水泳選手は体が水平方向を向いた姿勢(水平姿勢)で水に浮かびながら泳ぐことにより, 水の流れに直面する体の面積が少なくし,抵抗を減らすことができます. しかしながら,人が水平姿勢で水に浮いた場合,人の体は一般的に足が沈む傾向を持っています. 足が沈む傾向が大きな人は,足が沈む傾向が小さい人よりも蹴のびの姿勢で加わる水の抵抗が大きくなることが知られています. これまでの我々の研究では腹式呼吸で息を吸い,空気をより下半身に近づけることで,足が沈む傾向を小さくなることが分かりました. そのため,腹式呼吸を用いることは水の抵抗を減少させるであろうと考えられます. そこでこの研究では,蹴のびの際に腹式呼吸を行うことによって水の抵抗が低くなるという仮説を検証する実験を行いました. その結果,蹴のびの際に加わる抵抗が腹式呼吸によって胸式呼吸よりも6.6%小さくなることが分かりました.

野球の打撃中には,ローリングと呼ばれるバットの長軸まわりの回転が見られます. ローリングの速度が速くなることで,鋭い打球を打てることがわかっています. 本研究の目的は,野球の打撃中にどのようにしてバットがローリングするのかを明らかにすることでした. 大学およびプロの野球選手16名を対象にフリーバッティングをしてもらいました. 電磁ゴニオメータという3次元運動計測器のセンサをバットのグリップエンドに装着して,バットの運動を計測しました. その結果,バットのローリングは,打者が『意図的に』回転させているのではなく, 打者がバットをスイングすることによって『勝手に』回転してしまうということがわかりました.

本研究では,ボレーシュートにおいてどのようにボールをキックすれば速いシュートを放つことができるのかを調べました. サッカー経験のある男子学生9名(右利き)がターゲット(1.3×1.3m)を狙ってボレーシュートをしました. ボレーキックするボールは,右サイドからセンタリングをしたようなボール軌道に設定しました. 足のスピードとボレーシュートのスピードを算出しました.また,足のどこにボールが当たったのかを算出しました. その結果,足のスピードを速くすれば他の選手よりも速いボレーシュートを放てることが分かりました. また,選手によって速いボレーシュートを放つために必要な技術が異なることが分かりました.